港へ持ち込む前の準備と確認ポイント
スクラップを港へ搬入する前の準備は、船積み全体の効率と安全性を大きく左右します。特に鉄スクラップの分類や規格確認は、後工程の検収や輸送の正確性に直結するため、最初のステップとして慎重かつ丁寧に行うことが重要です。
まず行うべきは、鉄スクラップの性状整理です。検収統一規格に基づきロットを明確に区分し、「スクラップ H1・H2・h4」の違いを現物で確認します。新断材、特級材、鋳物材なども正確に分類しておくことが必要です。モーターブロックや鋼管、ネットフェンスなどは残液や油分が付着しているケースが多いため、ヤードでの前処理段階で除去しておくとトラブル防止につながります。
SUS304や非鉄金属の混入が疑われる場合は、磁選機や分析機器を使用して分別し、再選別やクレームの原因を未然に防ぎます。ハイマンガン鋼やヘビースクラップといった高比重の素材は積み込み機械への負荷が大きくなるため、あらかじめ積み込み動線や使用アタッチメントの選定を済ませておくと、港での待機時間を短縮できます。
次のステップは、数量の確定と記録用写真の準備です。トン単位の概算だけではなく、積み付け順に合わせた「サブロット(小分けロット)」を作成し、撮影時刻や角度がわかる写真をそれぞれ添付します。荷姿の統一は検収判定において重要であり、圧縮や切断の基準を明確にし、輸送中に荷崩れが起きないよう養生を施しておく必要があります。
自家発生スクラップと市中回収スクラップでは不純物の混入率や形状のばらつきが異なるため、作業時間に差を設けた工程計画を立てると現場が混乱しにくくなります。「甲山」「鉄千地」「故銑」といった地域独自の用語は意味が曖昧になりやすいため、用語集を共有して判定のズレを防ぐことが望ましいです。
輸送計画を立てる際には、港の受け入れ条件や船舶の大型化への対応も考慮する必要があります。岸壁の制限、作業時間帯、騒音対策、海上気象などを事前に物流計画へ反映させることで、作業全体がスムーズに進行します。関東エリアからの搬入では協同組合の入札スケジュールと重なる可能性もあるため、トラックや重機の手配に余裕を持たせ、港の混雑ピークを避ける工夫が有効です。
搬入の際にありがちな疑問点も整理しておくと、現場対応がスムーズになります。「どのグレードまで混載できるのか」「港の安全基準や立入区域はどのようなものか」「積み込み順序はどのように決めるべきか」など、事前に基準を明確にし、資料や写真を共有しておくことが重要です。
以下は、搬入前準備のチェックシートの一例です。
| 項目
|
目的
|
判定基準
|
記録方法
|
| 分類の確定
|
規格適合の確認
|
H1・H2・h4・新断などの区分が明確
|
規格票と写真の照合
|
| 前処理
|
付着物や残液の除去
|
モーターブロックや鋼管などに異物が残っていない
|
作業前後の写真記録
|
| 数量とロット
|
重量と小分けの管理
|
サブロットごとの重量と荷姿が一致
|
計量票とロット札の記録
|
| 輸送と動線
|
搬入計画の最適化
|
到着時刻と積込順が一致
|
搬入台帳の記録
|
| 安全と装備
|
入構条件の遵守
|
保護具や許可証が確認済み
|
チェックリストの記録
|
書類や検査で気をつけるべき注意点
港での受付や通関に必要な書類や検査項目は多岐にわたるため、それぞれの提出先や内容を明確に整理しておくことが大切です。基本となるのは、売主と買主の情報、品名、数量、引渡し条件を明記した書類です。これらの情報には、鉄スクラップの規格やグレードも含まれている必要があります。H1・H2・h4の区別や検収基準が一目でわかるよう記載しておきましょう。
検収用の写真には撮影角度、解像度、ロット札の読み取りやすさなどの形式要件が定められていることが多く、あらかじめ撮影ルールを統一しておくと検査がスムーズになります。協同組合を介した案件では、指定様式と自社様式の違いにも注意し、差分を事前に埋めておくと提出の手戻りがありません。
検査は「安全」「品質」「数量」の3つの視点で考えると整理しやすくなります。安全面では、放射線・残液・可燃物などの有無を確認し、検知記録や処理証明書を保管します。品質面では、鉄スクラップ規格やグレードの適合性、異物混入率、鋳物比率などがチェックされるため、荷姿別の写真や選別作業記録が必要です。数量面では、計量記録と船積み時の積込量が一致しているかどうかを照合し、船荷証券との整合性を確認します。
以下は、書類・検査項目とその目的・内容をまとめた対応表です。
| 書類・検査
|
目的
|
必要情報
|
提出先
|
| 売買基本情報
|
当事者確認
|
社名、住所、連絡先
|
港湾・通関機関
|
| 品目と規格
|
規格適合確認
|
H1・H2・h4などの区分
|
買主・検収担当
|
| 数量証明
|
重量の確定
|
計量票、ロット明細
|
通関・船社
|
| 写真記録
|
現物確認
|
全景、拡大、撮影時刻
|
検収・通関担当
|
| 安全確認
|
危険物の有無確認
|
検知記録、処理証明
|
港湾管理者
|
| 輸送明細
|
積付内容の一致確認
|
積付順序、計画書
|
船社・作業班
|
よくある疑問にも事前に対策しておくと安心です。「数量はいつ確定すべきか」という疑問には、搬入前の計量でサブロットを締め、現場計量との差分が出た場合は訂正履歴を残す方法が有効です。「どの検査が必須か」という点では、港湾と輸出先双方の基準を確認することが欠かせません。「書類名が似ていて混乱する」という問題には、用語や書式を統一して共通テンプレートを使うことで対応できます。