黒モーターの特徴と処理上の注意点
黒モーターは冷蔵庫やエアコン、業務用冷凍機器などに搭載される密閉型の圧縮機モーターのことで、その特徴から「密閉コンプレッサー」とも呼ばれます。外観は黒い塗装が施されており、中に冷却用オイルが密閉されている構造です。解体やスクラップ買取の現場では、「黒モーター」と呼称されることが一般的で、金属スクラップとしての価値は一定の評価を得ています。
黒モーターの買取市場で注目されるのは、主に以下の点です。
- 重量があり、銅・鉄・アルミなどの複合素材で構成されている
- 内部に油分が含まれているため「油抜き」が必須
- 解体難度が高く、専門の工具と知識が必要
- 工業モーターに比べて銅線の含有率がやや低い傾向
買取単価は「油抜きの有無」で大きく左右されるため、事前の処理が重要です。油が残ったまま持ち込まれた黒モーターは、環境負荷の観点から減額または買取不可となることがあり、処理の可否は各業者のポリシーに依存します。
以下は、黒モーターの主な構成素材とその再利用価値を示した一覧です。
構成部位 |
主な素材 |
市場価値 |
再利用先例 |
巻線コイル |
銅 |
高 |
電線、配線材、導電部品 |
外殻・ケース |
鉄・鋼板 |
中 |
建材、鋼材リサイクル |
軸受けや内部部品 |
アルミ・真鍮 |
高 |
自動車部品、精密部品など |
冷却オイル |
鉱物油 |
低 |
廃油処理、特殊処理が必要 |
また、黒モーターは「雑品スクラップ」として分類されることもありますが、近年は分類が細分化され、「黒モーター単体」として明確に価格が付けられるケースも増えています。全国のスクラップ業者が現在で提示している黒モーターの買取価格はおおよそ1kgあたり80〜150円前後とされており、処理状況によって上下します。
さらに重要なのは「持ち込み方法」です。法人が回収依頼をかける際には、油抜き・品目の事前申告・運搬条件などの確認が求められます。一方、個人が持ち込む場合でも、以下のような注意点を押さえておくと、スムーズな取引が可能です。
- あらかじめ油抜きを済ませておく
- モーター以外の異物(プラスチックなど)を除去する
- 銅線などの部品が著しく損傷していないか確認する
リサイクルの観点から見ても、黒モーターは非鉄金属資源の回収に貢献できる重要なアイテムです。環境配慮型のスクラップ処理を促進するためにも、処理方法を正しく理解し、適切な業者に引き渡すことが求められます。
モーターコア・水中ポンプ・小型モーターの違いと価値の違い
スクラップとして扱われるモーターにはさまざまな種類が存在し、それぞれに異なる特徴と評価基準があります。特にモーターコア、水中ポンプ、小型モーターは、形状・用途・内部構造が大きく異なるため、リサイクル時の価値や取り扱い方法も変わります。ここではそれぞれの特徴と、再資源化における評価の違いを詳しく解説します。
まずは3種類のモーターの基本的な比較を以下にまとめます。
モーター種別 |
主な用途 |
銅含有率 |
重量 |
買取価格帯(kg単価) |
特徴 |
モーターコア |
解体済みモーターの中核部品 |
高 |
中〜大 |
140〜180円 |
銅線が集中し価値が高い |
水中ポンプ |
浄水設備、工業排水装置など |
中 |
大 |
60〜100円 |
アルミが多く解体が困難 |
小型モーター |
家電・玩具など |
中〜低 |
小 |
40〜90円 |
軽量で扱いやすく数量が鍵 |
モーターコアは、すでに外殻やプラスチック部品などを除去された状態のモーターの核となる部分です。銅巻線が密に配置されており、解体・分別の手間がかかっている分、スクラップとしての価値が高いとされます。法人の解体業者やリサイクル企業が大量に保有することが多く、非鉄金属回収の観点では最も効率の良い品目です。
一方、水中ポンプは大型で水密構造になっており、内部に銅やアルミが含まれてはいるものの、解体には専門的な工具と時間が必要です。また、アルミやステンレスなどの素材が混在しているため、分類や処理を誤ると減額対象になることも少なくありません。工業用設備での使用が多く、法人向けのスクラップとして回収されるケースが一般的です。
そして小型モーターは、扇風機・ミキサー・ラジコン・プリンターなど、家庭用の雑品や精密機器に広く搭載されています。構造は簡易で扱いやすいものの、銅線の量が少なく、1個あたりの金属価値は高くありません。しかし、解体不要でそのまままとめて持ち込めるという点では、個人でも扱いやすいカテゴリといえます。
これらの違いを踏まえたうえで重要なのは、「自分が所持しているモーターがどのカテゴリに該当するか」を把握し、適切な方法で分別・運搬・処理を行うことです。業者によってはモーター種別ごとに分類を求めるところもあるため、事前の準備が買取単価に大きな影響を与えます。