鉄スクラップ素材(H形鋼・鉄筋・鋼板など)
鉄スクラップは国内で最も多く発生する代表的なスクラップ素材であり、建築や解体工事、製造業の生産ラインなどさまざまな場所から回収されます。鉄は再利用性が極めて高く、再生工程に回すことで新しい鉄鋼製品に生まれ変わるため、資源循環の要として位置づけられています。特にH形鋼や鉄筋、鋼板といった建材は解体工事で大量に発生し、安定した供給源として扱われています。
H形鋼は構造物を支える強度を持つため大型ビルや橋梁などに使われ、解体後には比較的大きな形状のまま回収されることが多いです。鉄筋は住宅やビルのコンクリート構造の内部に使われており、解体時にコンクリートから取り外す工程が必要ですが、量が多いため重要な資源となります。鋼板は工場設備や造船、車両など幅広く使用されるため、使用後に発生する鋼板スクラップも鉄鋼業界において欠かせません。
鉄スクラップは磁力で容易に分別可能である点も特徴です。回収後は加工処理によって異物を取り除き、サイズを整え、製鉄所で溶かされて再び製品化されます。以下の表に代表的な鉄スクラップの種類と特徴を整理します。
| 種類 |
発生源 |
特徴 |
| H形鋼 |
大型建築物 橋梁 |
強度が高く再利用価値が高い 大きな形状のまま回収される |
| 鉄筋 |
建物解体 工事現場 |
量が豊富だがコンクリート付着物を除去する必要あり |
| 鋼板 |
工場設備 造船 自動車 |
厚さやサイズにより分類される 加工しやすい |
| 鋳鉄屑 |
機械部品 車両部品 |
硬度が高い 特殊鋳造品として再利用可能 |
非鉄スクラップ素材(アルミ・銅・真鍮・ステンレス)
非鉄スクラップは鉄以外の金属を指し、代表的なものにはアルミニウム、銅、真鍮、ステンレスがあります。これらは鉄に比べて軽量で耐食性や導電性など独自の性質を持ち、再利用価値が高いためスクラップ市場で特に注目される素材です。
アルミニウムは建築資材や飲料缶、自動車部品に広く使われています。軽くて錆びにくいため需要が高く、スクラップとして回収された後も効率的に再生可能です。銅は電気伝導率が非常に高いため、電線や電子機器に多用されています。スクラップ市場では非鉄金属の中でも高値で取引されることが多く、安定した需要があるのが特徴です。真鍮は銅と亜鉛の合金で、水道部品や建築金物に多く使われています。加工しやすく美しい色合いから装飾品としても利用され、リサイクル価値も高いです。ステンレスは鉄にクロムやニッケルを加えた合金で、錆びにくく耐熱性に優れるため、厨房機器や建築資材、医療器具など幅広く利用されています。
以下に非鉄スクラップの特徴を整理します。
| 種類 |
主な用途 |
特徴 |
| アルミ |
建材 飲料缶 自動車部品 |
軽量で錆びにくい 再生効率が高い |
| 銅 |
電線 配管 電子部品 |
電気伝導率が高い 高値で取引される |
| 真鍮 |
水道部品 建築金物 装飾品 |
加工しやすく美しい色合いが特徴 |
| ステンレス |
厨房機器 建築資材 医療器具 |
耐食性と耐熱性が高く衛生的な用途に強い |
非鉄金属スクラップはリサイクル過程においても損失が少なく、何度も再利用できる特性を持っています。特に銅やアルミは資源としての希少性が高まりつつあり、国際市場でも需要が拡大しています。ステンレスは複数の元素を含むため分別がやや難しい一方で、リサイクルによる環境負荷削減の効果が大きく評価されています。
特殊スクラップ素材(金属加工品・工業機械・自動車部品)
特殊スクラップ素材とは、一般的な鉄や非鉄金属の分類に収まりきらない多様なスクラップを指します。具体的には金属加工品や工業機械、自動車部品など、複合的な素材や高度な分別が必要なものが含まれます。これらは形状や成分が複雑であるため、専門的な処理技術を持つ業者による対応が必要です。
金属加工品は製造業の現場で発生する切削屑やプレス屑などを指し、形状が小さくても高純度の金属である場合が多いため再利用価値は高いです。工業機械は設備更新や工場閉鎖に伴って大量に発生し、重量物であるため解体と搬出の工程が重要となります。内部には鉄や非鉄金属のほか、プラスチックや油分を含む部品もあるため、適切な分別処理が必要です。自動車部品は車両の解体時に発生し、エンジン、トランスミッション、アルミホイールなど多様な部品がスクラップとして回収されます。自動車リサイクル法に基づき適正に処理されることで、金属資源の有効活用が可能となります。
特殊スクラップ素材の代表例を整理すると以下の通りです。
| 種類 |
発生源 |
特徴 |
| 金属加工屑 |
製造工場 加工現場 |
小型だが高純度の金属が多い 再生効率が高い |
| 工業機械 |
工場閉鎖 設備更新 |
大型で重量がある 専門業者による解体が必要 |
| 自動車部品 |
車両解体 整備工場 |
多種多様な金属を含み リサイクル法に基づき処理される |
| 電子機器部品 |
家電 電子産業 |
貴金属を含む場合があり高い資源価値がある |